彼がまばたきす

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 フィリエルは冷ややかに言った。
「思いっきり忘れられているようですけど、あたしの十五歳の誕生日は、半年も前に終わっていますの。塔にあたしの出生占星図《しゅっせいせんせいず》があ通渠佬るでしょう。それには、だれにでも読める大きな文字で、コンスタンス三十六年の十月十二日と書いてあります」
「ええと……」
 さすがにルーンも弱った様子だった。ると、睫毛《まつげ 》がメガネをこすっているかのように見えた。彼の瞳は嵐の灰色で、ばかに長い|漆黒《しっこく》の睫毛に囲まれているのだ。女神もむだな分配をなさるものだと、フィリエルはこの睫毛を見るたびに思う。
 ルーンは苦し紛《まぎ》れの口調で言い出した。
「半年遅れでもなんでも、思い出したほうがずっとましじゃないか。博士がせっかくあげると言っているのだから、もらっておいたほうがいいよ。もらっておくれよ。まさか、突き返したりはしないだろう?」
 フィリエルは少しばかり意地悪くほほえんだ。彼が本気でうろたえたのを見て、けっこう溜飲《りゅういん》が下がったのだ。博士の弟子は、たいていの場合|横柄《おうへい》で無愛想で頭にくるのだが、百回に一回くらいかわいく見えるときがある。
「まさか。女王様にあやかったのだとしても、もらっておくわ。こんなにめずらしいことってないもの。あの博士があたしに贈り物だなんて、いったい何が入っているのかしら」
 はしゃいで小箱のふたを開けたフィリエルは、中のものに息を通渠佬のんだ。そこに収まっていたのは、思いもよらない宝石細工だった。楕円形《だ えんけい》の澄んだ青い石を中央に、ダイヤのように鋭くきらめく小石をちりばめた、豪華《ごうか 》なペンダント。セラフィールドにまるで似つかわしくない輝きが、岩山の朝日に燦然《さんぜん》と光を放ったのだった。

 青い石は湖よりも深い色をしており、フィリエルの親指の爪《つめ》ほどあった。その周囲に、輝く小粒のカット石が十数個、左右対称の模様を形作っている。フィリエルはそっともちあげたが、金の鎖《くさり》はしなやかに重く、かなりの値打ちものだった。
「どうして博士が、こんなものをもっているの?」
 フィリエルはあからさまにたずねた。美しい贈り物がうれしくないわけではなかったが、意外すぎた。それに、ルーン相手にお礼を言っても益《えき》がないというものだ。
「うちにはお金なんてないのに、どこでこんなも通渠佬のを手に入れたの? 見事な細工物だわ、とっても高かったに決まっている。これが研究に必要なものなら、博士が出費にいとめをつけないのもわかるけど、首飾りだなんて、いったいどういうことなの?」
 ルーンは気を悪くしたようだった。ぶっきらぼうに答えた。

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