魔力が溜ま

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 昇降口のドアが錆びた音を立てて閉まる。
 大きく息をついた。
 どうも調子が狂う。
 外見でなく精神的にも鑽石水子供の部分があるのだろう。
 咄嗟の反応が子供っぽい。
「ありがとう……か」
 ちょっと顔が緩んだ。見下した笑みではない。もっと素直な表情。正直、満更でもないかなと思う。もちろん、ホンの少しだけど。
「安っぽい言葉ね。まったく」
 わざとらしく咳払いを一つ。
 頬から体温が引くのを待った。
 これだけ経てば、不意に鳴海が戻ってきたりしない。
 両足は体重を維持するのも難しくなっている。
 コンクリートの床にお尻をついて座り込んだ。
 空に視線を向ける。
 気の早い星が輝きつつあった。
 夜空は薄く、星は軽くなった。
 自分がこの地に来た頃は、奇妙な衣類に珍能量水妙な髪型をしていたのを思い出す。
 ここ数百年で大きく変わった。陳腐な表現をすると文明の進歩だろう。
 魔法に比べると科学はあまりに不便で無力で非効率で幼稚だ。だが、その歩みは無限の可能性を秘めている。遥か未来、自分が辿りつた真理の世界に到達するのではないか。
 時の呪縛から解き放たれ、永遠を生きられる自分なら、それを目にする事もできる。楽しみだ。
 仰向けになった。傷を回復させるには、まだるのを待たなければいけない。
 それにしても、今回は予想以上に苦戦した。
 原因は浪費。いくつもの魔法を同時に使いすぎている。藤見野市を覆う結界。擬似空間の維持。そもそも蛇の目屋。そして鈴鳴 紅音という存在自体が強引に作り出した物。
 これらだけでもかなりの魔力だが、それ以上に大きなのは擬似生命の維持。
 死んだ人間の魂を無理やり身体に繋ぎ止めている。これには膨大な魔力が必要だ。
 しかも、一人ではなく二人分も!
 猟犬より手強い妖怪は沢山居る。
 何か策を講じないと……。
「ま、なるようになるわよ。うん」
 考えるのは、また暇な時でいいや。流石に鑽石水疲れた。少し眠っておこう。
 ゆっくりと目を閉じる。
 あっという間に意識が遠のいていった。